なぜ私は宇宙よりも遠い場所に涙したのか
今更なんじゃいと言われるかもしれませんが、観ました。よりもい。
アニメ作品「宇宙よりも遠い場所」というアニメ作品です。(ひらがな部分を読んで通称、よりもい)
評判はかねがね聞いていて、日々配信されるドラマ・アニメに追いつくのに必死でマイリストで眠っていたのですが、やっと観ました。
素晴らしい作品でした。
一人で部屋でぼろぼろ泣いた。
久しぶりにこのブログに感想を書き残しておきます。
完全に最後の結末まで触れています。ネタバレ前提でお願いします。
「よりもい」とは
公式サイトからあらすじ引用
そこは、宇宙よりも遠い場所──。
何かを始めたいと思いながら、
中々一歩を踏み出すことのできないまま
高校2年生になってしまった少女・玉木マリ ことキマリは、
とあることをきっかけに南極を目指す少女・小淵沢報瀬 と出会う。高校生が南極になんて行けるわけがないと言われても、
絶対にあきらめようとしない報瀬の姿に心を動かされたキマリは、
報瀬と共に南極を目指すことを誓うのだが……。
簡単にいえば女子高生が南極行く話。ただそれだけだ。
主人公ら4人はそれぞれが年相応の悩みを抱えていて、薄暗い教室や日常での生活を変えたいと願う。
それはとても青く、淡く、爽やかで、いじらしい話だった。
ズバリ「よりもい」どうだったか。
これは人生。人生の物語だ。そう思った。
高校生という子供と大人との間にいる彼女らが、それぞれが秘めていた想いを昇華させる為に旅立つ。行き先は南極という人を拒む過酷な地。
それまさに彼女らがいた学校という子供の世界から、社会という大人の世界への一足早い大冒険だ。
そんな過酷な環境にあえて踏み出す理由。いや、踏み出さねばならなかった理由。
4人それぞれが抱えた決意と、これまでの生活への決別に想いを馳せると目頭が熱くなってしまう。
キマリは、何者でもない自分を変えるため。
結月は、本当に大切な仲間を見つけるため。
日向は、過去に決別し新しい道を歩きだすため。
そして報瀬は、消息を絶った母を自ら探すため。
この報瀬ちゃんのエピソードが本当に涙腺を刺激した。
彼女が南極に行くと決めた日から、バイトに勤しみ、ついに貯めた旅の資金100万円。
「女子高生が南極なんていける訳無いじゃん」
そんな薄笑いをはねのけ、どんな想いで淡々と溜まっていく預金通帳を眺めていたであろうか。どんな想いでそれが入った封筒を握りしめて居ただろうか。
その姿を想像するだけでもう無理だ。
日常で、もしも不意に100万円の札束をみるような機会がもしあったらフラッシュバックして泣いてしまうんだが。
どうしてくれるんだ。
到達し叫ぶ「ざまあみろ」
かつて母と同行していた観測隊の大人たち。そして一緒に足跡をつけた、手を取り合った友人たち。
不器用な彼女らが遂に踏みしめた最初の一歩。感傷に浸るわけでもなく、共に来てやったぞと、勝どきをあげる。
感情を表にだすのも苦手な彼女が、その宣言通り、過去自分を馬鹿にしてきた奴らに対して拳を振り上げ叫ぶ。
「ざまあみろ」と。
やったな!やってやったな!
祝福を送るとともに、心が苦しい。
なぜならば、9話まで観て、私は分かったんだ。
決して誰も直接語るわけではない。報瀬ちゃんは本当はお母さんを探しに来たんじゃないんだ。
お母さんに本当のお別れを言う為にここまで来たんだろう。
彼女なりのお葬式をしに来たんだろう。
毎日毎日、実感の無いまま仏壇の前で生活してきた彼女。
送り続けた母へのメッセージ。
そんなつらい想いを抱えてまで南極に来なくては行けなかったのか?
未知の荒波に揉まれ、命がけで安全な地から離れてこのスタートラインに立たなくてはならなかったのか?
答えはキマリちゃんが言ってくれた。
「選択肢はずっとあったよ でも選んだんだよ、ここを 選んだんだよ! 自分で。」
もう無理なんだが。文章書きながら画面がにじむんだが。
宇宙よりも遠い場所で
そして遂にきてしまったその瞬間。
12話。母が消息を絶った観測基地に赴く。
宇宙よりも遠い地。日本からの距離もそうだが、女子高生が訪れるには高すぎる壁があった。
覚悟と努力と幸運で掴み取り辿り着いたこの地。
その基地にたどり着いてしまったら、その先はもう無い。
想像もつかない覚悟をもって同行する報瀬ちゃんの姿をみるだけで胸が締め付けられた。
ここからの展開はつたない文で描写するにはもったいない。
仲間が見つけてくれた母の痕跡。
空間も時間も越えて繋がった。いや、繋がらなかった想い。
数年を通じて送り続けた、彼女の想いを受信ボックスの数字だけで表現する丁寧さ。
かけがえのない、大切な彼女の人生の時間。
この世の中で、時間の積み重ねほど感動的なものは無いと思う。
決して戻せない。決して追いつけない。不可逆なものだから。
だからこそ、同じく時間の流れを象徴する長い髪の毛を、バッサリ切って南極を後にする報瀬の姿に、何倍・何乗もの感動が重なってしまうのだ。
やばい、思い出すだけで涙腺。おい。
ここから、ここから
4人それぞれが人間を拒む大地に赴き、4人がいたから成長して帰ってくる。
キマリちゃんが居たからこそ、この4人は繋がったし旅は成功した。
最終13話「きっとまた旅に出る」
最高のタイトルと締めくくりだ。苦楽をともにして、確かな友情を育んだ仲間。
それぞれが自分の生活に戻り離れ離れになるけれども、たしかに南極にいった。
そして、また訪れると決めた。
キマリの物語の最後、日本に残していた絶好宣言された親友めぐみちゃん。
彼女との友情も一緒に南極へいってきた。そして北極へも向かった。
たしかに宇宙より遠い距離を通じて届いていた。素晴らしい締めくくりだ。
名残惜しいエンドロール、通常とは違う特殊仕様だ。
そこには、最後に、4人の姿、名前、声優が順に映し出される。
三宅 日向 井口裕香
白石 結月 早見沙織
玉木 マリ 水瀬いのり
おいおい
旅の果てに振り返る主人公たちの姿
こんな演出、アベンジャーズ/エンドゲームの初期メン6人のクレジット以来じゃん。
最後の一秒まで泣かせにかかるのやめてくれませんか
よりもいに2期を求める声があるようですが、それは反対だ。
もちろん私だって彼女らにまた会いたい。
でも今の、未来に無限の可能性が開いている状態。このラストこそが完璧じゃないですか。
彼女らは絶対にまちがいなく4人、いや、今度は5人でまた南極に行く。
それをわざわざ描いて確定させてしまう必要がどこにあるのだろうか。(いや、無い)
こんなたったの13話で描ききった作品を観たのは久々でした。
また明日から頑張って生きていこう。そう思いました。
以上、今更よりもいを観た感想でした。