【映画感想】ラストナイト・イン・ソーホー

映画感想です。

普段観た映画は、自信に取り込むため、というか消化して腑に落ちさせる為に、映画アプリFilmarksにいつも書き留めています。

けど、せっかくブログもやっているのでコチラにも同じような内容になるけど、書き留めて置こうかなと。(バックアップ兼ねて)

 

早速ですが初回は、先日みた劇場公開映画「ラストナイト・イン・ソーホー」についてです。

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(C)2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

エドガー・ライト監督作品。
前作の「ベイビー・ドライバー」がその公開年の個人ベストなので、まぁ好きになるだろう。という期待を込めて初日レイトショーで見てまいりました。

 

現時点、2021年ベストの作品だった。

 

以下、ネタバレありで感想を書いていきます。

 

監督十八番の音楽使いで、退屈する隙を一切与えてくれない。

選曲とリズムと映像によって、催眠状態にされているのだろう。
色んな感情で振り回され、映画を見ていることを忘れてしまう。

こういう映画体験が好きで好きでしようがない。

 

田舎から出てきた夢に向かって頑張る子が、都会とスクールカーストに揉まれ苦労する。というよくある導入。
親目線で心配になっちゃう自分がいて、まぁそれだけでも楽しい。

ただ一つ、主人公のエロイーズにはある”才能”がある。
亡くした母が鏡の中に見える。どうやら見える子ちゃんの様だ。

この"才能"が何なのか。
本筋である「時代を超えた追体験」とどう繋がってくるのか。
冒頭時点では分からなかった。

 

寮から飛び出した先の下宿先。

差し込むネオン点灯とレコード曲のリズムがシンクロし、
夢の中で、美しいサンディとエロイーズがシンクロする。

エロイーズにとって憧れの60年代。光煌めく夜の世界で輝くようなサンディの人生を追体験していく。

心地よい名曲にのせてエロイーズもサンディも、そして見ている自分も胸踊る楽しい体験。

入学後に遅れて始める大学デビューで、エロイーズの学生生活も嘘のように上手く回っていく。
その様が面白いし、先の展開を想像してハラハラさせてくれる。

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次第に破滅させられていくサンディの夢。

輝いているから影ができるのではなく、影があるから輝いているように見えていたソーホーに巣食う汚い男ども

夢の中で、為す術ないサンディを救おうとするエロイーズ。彼女の叫びは届かない。
そしてスクリーン内で、翻弄される二人を見守しかない我々観客。

このシンクロはやばい。

 

悪夢に変わったこの体験。
傍観者でしかなかったエロイーズが、ついに境界をぶち壊してサンディを抱き止める。

しかし悪夢は終わらない。

白昼は安全という前提が崩れ、夢と現実が曖昧になり、侵食されていく恐怖
スクリーンの外でシンクロしている自分にも、同じことが降り掛かってくるのではないかと恐ろしくなってくる。

 

恐怖の対象は心霊ではなく、野蛮で欲にまみれた男どもの精神だ
挙げ句、最後には醜い姿で「俺たちを救ってくれ」なんてのたまう始末。ふざけるな。
NOを突きつけてやった瞬間に心のなかでガッツポーズ。

 

もはや現実は遠のき、抽象的な空間のなかで語り合う二人。

正しくないがそうするしか無かった事を身に沁みて知っている。

悲しく怒れる舞台となった部屋を焚き上げるラストが切ない。

 

ラストシーン。
鏡にうつる微笑み立つ彼女。
冒頭で疑問だったエロイーズの才能が再び描かれる。

あちら側の住人が、エロイーズのそばに現れ立っているのではなく、
実はエロイーズが、あちら側の住人に寄り添っているのではないか。

昔、確かにそこにあり、去っていった悲しみに向き合い受け止める。
それこそが彼女に与えられた”才能”なのではと思った。

 

そんな感傷にふけって満足感とともに劇場を後にしました。

ぼんやりしててパンフレットを買い逃し、翌日買いにいきました。

 

心に余韻を残してくれる映画は好きだ。